【長編小説】BADEND小説の世界に、小説の登場人物として転生した結果。〜全てを知る俺がこのBADEND小説をHAPPYENDへ〜14話

初収穫の宴から、数週間経った。

その間、各ギルドに行っていた鬼族達が、より高度な技術を学んで、続々と島に帰った。

そして、学校で鬼族の他の生徒達に教え、技術の普及に努めた。

鬼族達は、ルドウィンが献身的に様々なことをしてくれている恩返しにと、ルドウィンのための城を大急ぎで作ってくれた。

今まではルドウィンは野外で指示をしていたこともあり、一番の島の貢献者が、それでは心が痛いと、鬼族達の強い要望で作られた。

ギルドで懸命に勉強した勤勉な鬼族の職人が作ったので、立派で上質な城になった。

ルドウィンは城の内部を見学した。

「ルドウィン、すごい権力者のようだにゃ!」

ティルシーが城の豪華な内装を見て、はしゃいで回った。

ルーナは城の内部にある高価そうな瓶やツボなどの小物をまじまじと見て、興味深そうにしている。

リリアリーは飾られている甲冑や剣に興味津々だった。

イアはルーナの後をピタリとついてまわっている。

「ティルシー、あまりはしゃぐなよ。俺は今後やるべきことがたくさんある。すまないがルドウィン、ティルシー、ルーナ、イアはこのお金を受け取って、街で自由行動をとってくれ。できればルーナ、イアの面倒を見てくれ。」

ルドウィンはそう仲間に指示すると、ピカピカの城の大広間に行き、鬼族達に指示をする業務に戻った。

鬼族達はルドウィンが指示すると、勤勉に働いてくれて、指示通り、次々に新たな施設を作ってくれた。

市場と金属製錬所、鍛冶屋、造幣局だ。

ルドウィンは先日、鬼族の島で、市場を開放すること、島独自の通貨を作ることの許可を領主から得た。

領主には、経済が発展すれば、税の負担を金の延棒でできることを伝えると、上機嫌でOKをもらった。

これで、ルドウィンの国の独自の通貨、ルドウィン通貨を発行する準備は整った。

通貨の発行は、国にとって、非常に重要な特権だ。

経済を発展させるのに必要不可欠な要素でもある。

ルドウィンは鬼族みんなを集めて、集会を開いた。

「これより、この国独自の通貨、ルドウィン通貨を発行したいと思う。」

「通貨って、人間達が使っているあれか……。」

鬼族達がざわめく。

「最初は、ルドウィン金貨1枚につき、ルドウィン銀貨12枚、ルドウィン銀貨1枚につき、ルドウィン銅貨100枚、ルドウィン金貨1枚につき、ルドウィン銅貨1200枚のレートで行う。今までは無料でさまざまなサービスを行ってきたが、今回からは、基本的に通貨を使って取引をして欲しい。つまり、働いて通貨を稼ぎ、その稼ぎの10パーセントが税金になり、残りは、生活費に充てたり、娯楽に充てたりしてくれ!ただし、何か物を購入しても、一律10パーセントの税金がかかるぞ。税金は、みんなのために、俺が責任を持ってみんなに公共サービスとして再分配する。質問があるものはいるか?」

鬼族達が、たくさん手を上げた。

ルドウィンは、適当な鬼族を指差し、質問を許した。

「学校はどうなりますか?」

「学校は公共サービスにあたる。公共サービスは、生活する上で必要不可欠で国が負担すべきもの、例えば、教育や安全、交通、医療などのサービスだ。また、もし働けなくなった場合に給付金を与えるのにも使われる。だから安心して働いて欲しい。」

この言葉を聞いて、鬼族達はほっと安堵した。

真っ先にこの質問をするあたり、勤勉な鬼族らしい。

「他に質問はあるか?」

かなり手を上げる人が少なくなった。つまり、たくさんの人がこの疑問を持っていたと言うことだ。

本っ当に勤勉だな。鬼族は。

ルドウィンはそう思いながら、残り少ない手を上げている鬼族を指差し、質問を許した。

「じゃあ、今日から俺が働いている仕事も、給料が出るのですか?今、木を切っている仕事をしています。」

「もちろんだ。仕事をしている人なら、すべての人に給料が発生する。どんな仕事でもだ。そのお金の使い道は、税金を払った後なら自由に使って良い。娯楽、生活費、新たな事業を立ち上げるのも良い。その他に将来のために、貯金や投資をするのも良いな。そのために必要な施設を後々たくさん作る予定だ。期待してくれ!ちなみに、仕事を探すものは、職業紹介所に来てくれ。」

「おおお!!」

鬼族達が興奮と歓喜の声を上げた。

それもそのはず、今まではずっと食べ物は無料で、生活には困らないものの、働いても働いても、お金はもらえなかったのだ。

今まではルドウィンのために、鬼族達のために頑張ってくれたが、これからは、自分の将来のため、お金を増やすために働くことができる。

ルドウィンたちの住んでいた世界でも、お金を増やすことは、とても強力な原動力だった。

その後、質問に全て答え、ルドウィン硬貨が発行された。

ルドウィン硬貨発行後、その原動力から、鬼族達はとてもよく働いた。

農業を営む鬼族、森林を伐採する鬼族、交易する鬼族、道路を作る鬼族、先生になる鬼族、などなど、さまざまな仕事で鬼族が懸命に働いた。

なので、ルドウィンが計画すると、あっという間に立派な中央銀行と証券取引所、監督機関が完成した。

通貨を管理する金融機関の運用を開始する前に、法整備をしなければならない。

今までは鬼族が真面目で頑張り屋と言うこともあり、犯罪はほぼなかったが、これから先、「お金や資産」という誘惑が増えてくるため、犯罪やトラブルが発生する可能性がある。法整備でしっかり取り締まらないといけない。

そのために法律を各経済について学んでいる鬼族の専門家とともに制定した。法律全書をたくさん印刷するため、紙の技術の導入と、金属活字印刷の技術を導入し、たくさんの本を刷った。

ルドウィンはまた、みんなを呼んだ。

「たびたびすまない。みんな集まってくれてありがとう。お金が普及したことにより、トラブルも発生することが予想される。だから、法律を施行し、みんなが平等に問題を解決できるようにしたいと思う。法律は今宣言の後すぐに施行され、誰でも法律全書を図書館で借りて全文を見ることができる。あ、そうそう、図書館も利用してくれ。図書館にはたくさんの本が無料で借りれる。みんなの勉強に役立ててくれ。そして、法律施行後は、中央銀行や証券取引所、監督機関がそれぞれ開設される。詳しい施設の役割は図書館で各々調べてくれ。」

「図書館!!」

鬼族の目が輝いた。

法律を施行するインパクトより、図書館で自由に無料で本を借りれるインパクトの方が上回ったようだ。

さすが、勤勉な鬼族。素晴らしい。

いいねえ。異世界の図書館。

最初の天界での図書館では、あまりゆっくり本を見ていられなかったので、この鬼族の図書館でゆっくり本を見てみるのも良いな。

鬼族達の、異世界人の書いた本か……ワクワクするな。

と、仕事仕事。

ルドウィンは気を取り直して質問を受け付けた。

するとたくさんの質問があった。

主に図書館に関する質問だ。

何冊までOKか、どのくらいの期間借りて良いか、延滞したり、本を紛失したりしたら、どんな罰則があるか、など。

全く、鬼族がどれほど図書館に興味があるかこの質問からわかるな。

ルドウィンは質問に1人1人答えた。

その後、集会が終わり、法律が施行され、中央銀行や証券取引所、監督機関が開設された。

それぞれの役割は、中央銀行は「銀行の銀行」とも言われ、各民間銀行にお金の貸し出しを行う。そして、金融政策も行う。

証券取引所は株の発行、売買、債券の発行、売買を行う。株を所有することは、企業の一部を所有することであり、企業は株を発行することにより、資金を調達し、事業を行うことができる。

また、債券は借金と同じようなものだ。

債券にも種類があり、国が発行すると国債、会社が発行すると社債となる。

投資家から会社や国はお金を借り、投資家に利子を払う。そのお金を使って会社だったら事業を行い、国だったら国の政策や公共事業に使う。

監督機関は銀行や証券取引所が不正を行わないか監視する機関である。

この仕組みは、昔いたルドウィンの世界の現代の仕組みとほぼ同じ仕組みだ。

つまり、現代の知識を使って、現代の経済の仕組みを丸々、鬼族達の島に取り入れた。

これが、うまくいかないわけがなかった。

どんどん経済は良くなり、発展した。

中央銀行からお金を借りれるため、裕福な人の中で、銀行業が盛んになり、銀行業が盛んになると、お金に余裕がある人が銀行からお金を借り、起業する。

学校や図書館でよく学んでいる勤勉な鬼族だから、実に魅力的な会社を作り、事業が成功する。

だから、どんどん株や社債を発行し、お金を調達し、事業を拡大する。

そして、株が右肩上がりなため、お金を投資に回す投資家の住民も増え、ますます企業や国が儲かる。

こう言った良いインフレーションが進むことにより、島は発展した。

こうなると、次の問題が発生する。

通貨不足だ。

現在、ルドウィン金貨には金が使われており、ルドウィン銀貨には銀、ルドウィン銅貨には銅が使われている。

つまり、追加で通貨を発行するためには、その金属が必要になるが、大変な好景気により、通貨発行の需要が拡大、金属が足りなくなりつつある。

紙幣を発行したら良いと思う人はいるだろうか?

紙幣は確かに強力な経済の起爆剤になりうるが、ルドウィン通貨はできたばかりの通貨だ。まだ信用が少ない。

そんな状態で紙幣を発行してしまうと、諸刃の剣になってしまう。

だから、大量に金と銀、銅が必要だ。現在は近隣の都市の金や銀、銅を大量に買い、なんとかなっているが、根本的な解決にはなっていない。

だったら、鉱脈を探し出せば良いと思った人はいるだろうか?

この世界はまだ中世ヨーロッパのような文明レベルだ。その時代で鉱脈を探し当てるのは極めて難しく、至難の業と言える。

この問題はどうしようもない問題のため、保留にする。

次に対策しなければならない問題が、国防だ。

ルドウィンが予想するに、そろそろ国防を考えないと危ない。

なので、鬼族頭領と専門家に協力を仰ぎ、軍備増強を行なった。

鬼族は素晴らしい身体能力を持っているため、それを活かす、刀の製作を提案した。

我が故郷では、昔、武器は刀が主流だった。

刀は遠距離兵器が出てくるまでは、間違いなく強力な武器だ。

その刀と、驚異的な身体能力を持つ鬼族が組み合わさると、まさに鬼に金棒だろう。

ルドウィンは、刀の量産と、竹刀を使った剣術の訓練を指示した。

さらに、念の為、遠距離兵器の研究と量産準備も行なった。

これで国防も十分だろう。

これだけの作業をしたので、あの宴会から、数ヶ月経っていた。

これで、仕事がひと段落ついた。最近働き詰めだったので、休暇を取ることにしよう。

そして、数々の経済政策によって発展した島の様子と、そこで生活する人々、また、仲間達、ルーナ、イア、リリアリー、ティルシーはどのような生活を送っているか、見て回ろう。

ルドウィンは、早速変装して、街を見て回るために、城の大広間を出るのだった。

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