ルドウィンはそれから、国王陛下の赦しを経て、この世界をHAPPYエンドにするために行動することにした。
まずは情報だ。情報を集めないと話にならない。
国王陛下が言っていた王立図書館に行ってみた。
城の中のあちこちにいる使用人から道を聞き、城から出て、城下町に出る。
城下町は人や人ではない種族の動物で溢れている。
犬や猫、ドラゴンやサラマンダーのような動物、商人のような人や、騎士のような人、冒険者のような人が、各々自分の仕事をして賑わっている。
そんな人々や動物たちをかき分けながら、王立図書館の場所を聞き、王立図書館についた。
王立図書館は、さすが天界随一の経済規模を誇る火ノ国で1番の図書館。規模が大きく、中世ヨーロッパ風の作りで、中は広々としていた。
たくさんの本が本棚に所狭しと置かれており、本棚にはさまざまな種類の本が、きれいに種類別に整頓されて並べられている。
本棚は高くまであり、横には梯子が置かれて、高いところでも本が取れるようになっている。
この王立図書館には天界の盟主、火ノ国の王立図書館ということもあって、さまざまな国の叡智が集まっている。
兵法、言語学、法律、文学、芸術、歴史……これだ。
実は「王~崩落した世界より~」の世界の歴史に関するデータはほとんど小説に書かれていなかった。
だからこそ、まずこの世界の歴史、生い立ちに関する情報が必要なのだ。
なになに……。
ほとんど神話や、おとぎばなしのような話が多い。現代のように具体的な国の生い立ちや、歴史の授業で受けるような詳しい歴史の話が書いてある歴史書は少なかった。
しかし……探すとあった。
抽象的な話ではなく、きちんと研究された、歴史書が。
……なるほど。
この歴史書によれば要約すると、もともと人類は地上で生活していたが、とある事情により、天女の大地を浮かせる力を使い、天空で生活することになった……。
とある。
このとある事情のところは濁されており、わからない。
しかし、これは天界人から目線の歴史書だ。
地上の人間からの目線の歴史書が欲しいところだ。
そして、もう一つ不可解な点で、今後に大きく関わることがある。
地上の人間がなぜ天界人を恨んでいるか……だ。
それは太陽が遮られ、農作物が育たないから……だと小説「王〜崩落する世界より〜」に書かれていた。
……本当にそうだろうか?
そうだとしたらおかしい話だ。
当然地上の方が大地は大きく、天空は地上から見ると果てしなく広い。
いくら天空に大地があったからと言って、太陽の光を遮るほどの巨大な大地はないはずだ。
しかも……我々の火ノ国もそうだが、他の国の天空の大地は動いている。
太陽の光を遮ったとしても、何秒、かかっても数分だろう。
それで農作物が育たなくなるだろうか?
小説を読んでいた時から疑問に思っていた。
もし…もし、だ。
これが農作物が育たないのは別の理由だとして、この嘘を吹き込むメリットは……。
地上人に天界人が敵であるという洗脳だったとしたら?
「……」
これは憶測だ。
しかし……だとしたら納得がいく。
「地上に行くしかない。」
この憶測が真実か確かめるには、地上に行って、確かめるしかなかった。
天界の王位継承の儀式を中止できないのならば、もう、この天界でできることは少ない。
そもそもBADエンドに繋がる戦争は地上の人間が起こしたものだ。
この戦争の元となる、元凶を無くせば良い。
ルドウィンは、地上へ行くことの許可を取るため、国王に会いに行った。
「国王陛下、地上へ行く許可をいただきたいです。」
「……。」
国王陛下はこちらをみた。そして、ため息をついた。
「まあ、そんなことになるじゃろうと思っておったよ。危険は承知じゃろうが、行くのじゃな。」
「…はい」
「……ただし、わかっておるじゃろうな。」
「…はい。わかっております。身分は隠し、国王陛下に迷惑のかからないようにいたします。」
「そうじゃな。後、もう一点、能力は使わないようにな。地上には無能力者がたくさんおる。能力持ちじゃと思われれば、天界人だと疑われるぞ。」
「はい!あ、国王陛下、一つ質問があります。」
「なんじゃ、言ってみろ。」
「王位継承の儀式まで、あとどれくらい猶予があるでしょうか?」
「ああ。それは重要じゃな。今私の子供達が一番下が3歳ほどじゃから、大人になるまで、約18年ほど猶予がある。」
「わかりました。それまでに戦争が起きないようにいたします。」
「よろしく頼むぞ。後、一人じゃと不安じゃろうから、付き人をつけよう。」
「ありがとうございま……ええ!?」
そう言って国王に紹介された女性は…美女が3人だった。
しかし、ルドウィンが驚いたのは別の理由だった。
「あの…国王陛下、なぜ、このメンバーなのでしょう?」
「ん?女性じゃからといってみくびるでないぞ、一人はソルジャー国から、リリアリー、もう一人は猫王国から、ティルシー、そして、我が国、火ノ国から、ルーナ。」
「ルドウィン殿、よろしくお願いいたします。リリアリーです。」
「ルドウィン、よろしくにゃ。ティルシーにゃ。」
「あの、あの…よろしくおねがいします。ルドウィンさん。ルーナです。」
「あ、そういう意味で言ったわけではないが…。よ、よろしく。」
この3人、小説で見た登場キャラクターだ。
つまり、国王の息子の1人と共に旅をしたキャラクターなのだ。
国王の息子は今、国王の言ったことから推察すると、赤ん坊だ。
なので、この女性たちがこんなに大人なことがおかしい……。
いや、よく思い出してみれば、さっき王立図書館で、この世界にはさまざまな種族が存在していると本に書いてあった。
もしかして、長寿のエルフのような存在の種族がいてもおかしくはない。
少し、聞いてみるか。
「ところで、お三方、失礼ですが…年齢を聞いても?」
「急になんですか?まあ、私は120歳ですけれども。」
「あの、あの……私は81歳です(小声)。」
「なんにゃ!乙女に年齢の話って!私は500で数えるのをやめた!にゃ!」
おう……なんとういうか。みんな年齢が高いんだな。この中では俺は若造か。
どう見てもこの3人、見た目は年下なんだけどな……。
「みなさま、年齢がとても想像できないほど、とても美しいですね。」
もはや、苦笑いするしかなかった。
ジェネレーションギャップってレベルではない。
……気を取り直して、地上へと向かおう。
そして、素晴らしい異世界ライフを堪能するのだ。
そのために、この世界をHAPPYエンドへと導く。
道は見えてきた。
おそらく決してできないことではないだろう。
だから、決めたのだった。
「さあ、いこう!地上の世界へ!!」
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