ルドウィン達はギルドに案内され、依頼人に会った。
依頼人は初老の男性だ。
丁寧な挨拶をしてきて、討伐してほしい化け物の住処を案内してくれた。
化け物の住処は村のすぐ近くの土地だった。
聞けば依頼人の土地で、数日前から化け物が住み着いていて、困っているらしい。
依頼主の土地を見ると完全に干からびており、化け物が作ったと見られる簡易的な建物が作られており、見張りが当たりを警戒していた。
ちらりと近くの村の方角を見る。
村人達が見える。
村人が近くにいる場所では、能力を使うなど、目立った行動はしてはならない。
よって、ここでの戦闘では、自分の生まれ持った身体能力のみ使わなければならない。
だが、大丈夫だ。アーサーの時みたいに攻撃すれば良い。
剣を鞘から出して、剣を握り、簡単に倒せると確信したルドウィンは、仲間に下がるよう告げ、敵地に踏み込んだ。
見張りの敵がルドウィンに気づく。
ルドウィンは素早く、敵の見張りが仲間に知らせる前に、見張りを一閃し、倒した。
その後、化け物の住処に向う。
化け物達は寝ていた。
住処で寝ている化け物1対を倒す。
気づいた1対の化け物が襲いかかってくるが、ルドウィンは攻撃を躱(かわ)し、攻撃の隙をついて、襲いかかってきた敵をカウンターで倒した。
残りの2対が立ち向かってきたが、攻撃の軌跡を予想することが容易にできたので、敵の攻撃を躱(かわ)し、隙をついて剣で攻撃した。
そうしてルドウィンはあっという間にここの一帯の化け物を倒した。
「さすがにゃ!ルドウィン!」
「華麗でした!ルドウィンさん!」
「良い攻撃だったぞ。」
近くで見ていたティルシーとルーナ、リリアリーが駆け寄ってきた。
「ああ。3人とも俺の戦いを見ていたな?この要領で戦ってくれ。」
無事戦闘が終わり、本音では安堵していたルドウィンは、顔に出ないよう必死に隠しながらそう言った。
「了解だ!」
「じゃあ、敵も倒したし、報酬を貰ってガンガン討伐するぞ!」
ルドウィンたちは今回の報酬をもらい、片っ端から村中の依頼を受け、報酬を受け取った。
「ん~結構貯まったね。お金。」
「そうだな。化け物の依頼一つ一つは二束三文でも、数が多いからな。予想よりお金になったな。」
「いっぱい働いて、お腹すいたにゃ〜!!」
「ご飯を食べましょう!!ルドウィン殿!」
思ったより、なんとかなりそうだ。これで4人、しばらくは食っていけるだろう。
「そうだな!飯にしよう!!今日はなんでも食え!!」
「やったにゃ!」
「やった!」
「ありがとうございます!」
ルドウィンらはこの村で唯一の食堂に入り、ありったけのご飯を注文した。
「おや、誰かと思ったら今日話題のヒーローじゃない。」
店主が話しかけてきた。
そう。
ルドウィンはただここで飲み食いをしたかったわけではない。
これも立派な情報収集だ。
「私たちをご存知なのでしょうか?」
「そりゃあ、小さい村だからね。今日1日で冒険者になり、たくさんの依頼を引き受けたヒーローが出てきたって、村中の話題さ!」
大量に飲食を購入し、今日の村のヒーローのルドウィンたちに、店主の口が軽いのは当然のことだろう。
「冒険者は、化け物退治をしてくれる、私たち小さな村の人にとってはありがたい存在さ。」
「……。」
「この格好、冒険者のランクは一つ星と見える。だとしたらやっぱりあんたたちも勇者学校を目指すのかい?」
「勇者学校……。」
勇者学校。聞いたことがある。
もちろん小説の中でだ。
地上の世界屈指の精鋭が集まる、傭兵学校。
勇者学校と言っているが、実態は地上の世界の兵士を育成する機関だ。
ルドウィンはそこで洗脳をしていると疑ってもいる。
スパイらしく、勇者学校に潜入するのも良い方法だ。
おそらく情報もたくさん得られるだろう。
しかし、敵のど真ん中に潜入するので、非常に危険な道ではある。
「あの、勇者学校に入るには、条件があるのですか?」
「そんなこともわからずに冒険者になったの?いいわ、教えてあげる。ギルドで名声をあげ、評価をあげれば良いのよ。ギルドでたくさん高難易度の依頼を受ければ評価が段々上がるわ。そして、そのうちあなたの名声が勇者学校に届けば、晴れて勇者学校への招待状が届くの。とても名誉なことよ。」
なるほど、そうして精鋭の人間が集まって、学校で教育(洗脳)し、勇者、言い換えれば都合の良い兵士が誕生するわけか。
これは……。我々天界の人間にとって脅威だな。
しかし……。なんだこの違和感。
これは小説を、この世界を全て知るルドウィンだから感じる違和感かもしれないが。
ルドウィンはこの話に違和感を感じる。
……。今考えても仕方がないことだろう。
この勇者学校へと入学すれば全てわかるのかもしれない。
とにかく、今、直近の目標は勇者学校へ怪しまれずに潜入することだ。
そこで情報収集、スパイ活動をする。
敵地の真ん中だ。非常に危険な橋だが。
「あ~美味しかった!」
「え?」
あ、ちょっとタンマ。え?俺の分のご飯は?
「お!おい!猫!俺の飯は!?」
「にゃ、にゃ~何で私だけかにゃ?リリアリーもルーナも食べてたにゃ~!」
「そうなのか?」
「私はルドウィン殿に確認しました。ですが返事がなかったため……。」
「あの……お腹が減っていたので、まてができなくて。(小声)」
「ええ……。」
ああ、俺のご飯……。
「まあ、まだまだ材料はあるし、注文すれば飯はあるよ!」
「そ、そうだな……。じゃあ、注文……。?」
いや、待てよ。おかしい…。
「マスター、そういえば、この村の畑は干からびているのをみました。しかし、なぜ食料があるのですか?どっから仕入れているんです?」
「え?ええ、それは主に勇者学校から仕入れています。もちろん、周辺の街からの場合もありますが。」
勇者学校?
「そうなんですか?ここら辺は土地が痩せ細っているのですが、勇者学校や他の街は平気なんですか?」
「え、ええ。そうね。食糧難ということは聞いたことがないから、他の街や勇者学校では食料が豊富なんでしょうね。」
「……。」
ここら辺の土地が痩せ細っており、勇者学校や他の街の土地は肥えている…!?
「マスター、それはなぜかわかりますか?」
「え?ええ、それは、確かに……、なんででしょうね。」
その土地に住む人もわからない……か。
「まあ、いいでしょう。食料のことを心配しなくて良いのでしたら。遠慮なく注文します。」
こうしてルドウィンは、考えてもわからないことを振り切るように、腹一杯ご飯を食べた。
このご飯は異世界転生してから初めてのご飯で、美女3人と食べるご飯は格別だった。
美女3人は満腹のため寝ていたが。
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