【長編小説】BADEND小説の世界に、小説の登場人物として転生した結果。〜全てを知る俺がこのBADEND小説をHAPPYENDへ〜7話

食事を終えたが、今回は3人の美女たちは寝ていない。

ルドウィンを心配してくれている。

「なんか悪いものでも食べたかにゃ?急に立ち上がったりして……。」

「本当に大丈夫ですか?ルドウィンさん、お熱がありますか?」

「今日は早めに宿に戻ろう。ルドウィン、安静にな。」

「あ、ああ。ありがとう。」

みんなが優しい。そして、みんなが無事でよかった。

1度は全滅したのだ。優しくしてくれるみんなのため、次からは慎重に行動しなければならない。

1度ページ破りで過去に戻れたからと言って、またもう一度過去に戻れるという確証はない。

ページ破りは最後の手段。最低限にしなければならない。

ルドウィンは宿屋のベットに寝転がりながら、今回のことを反省していた。

翌日

昨日はあまり眠れなかった。あんなことがあったのだ。不安になってしまった。

まだ、興奮が冷めない。目が冴えてしまった。

そういえば前はティルシーが財布を奪うため、起こしに来たが、今回は来ていない。

代わりにルーナ、リリアリーが来た。

「昨日はよく眠れたか?ルドウィン。重要な任務だ。ミスをしないためにも、休養は大切だぞ。」

「ルドウィンさん、起こしにきましたよ。」

「心配をかけてすまない。本当に大丈夫だ。心配ない。」

「よかった。」

皆の心遣いがありがたい。

その後、食事を済まし、旅の支度をしてから、次の集落へ向かった。

途中、悪党に絡まれたが、リリアリーが一蹴し、無事、街に着いた。

ルドウィンたちは早速、街のギルドへ向かった。

「今ギルドで募集している仕事はこちらです。」

場所は覚えているので、すぐギルドに着き、ギルドで募集している依頼のリストの木簡を読んでいると、あった。ドラゴン退治の仕事依頼だ。

「最初に言っておくが、ドラゴン退治は行わない。他の簡単な依頼をこなす。異論は認めない。」

ルドウィンがキッパリとこう言った。

ルドウィンの真剣な表情と、これだけは譲れないという気配に、誰も口を出さなかった。

今思えば、おそらく、無謀な依頼とギルドは知ってて依頼を募集したのだと思う。

依頼前の羊皮紙のサインを求めたのが証拠だ。

また、依頼主の商人も事情を知っている可能性が高い。

羊皮紙のサインを執拗にサインしたか確認してきた。

とにかく、こんな裏がありそうな危険な依頼はせず、安全そうな依頼をこなすべきだ。

そう考えながら依頼のリストの木簡を読んでいると、あった。化け物狩りだ。

化け物はこの地上の世界に蔓延っている。

依頼はたくさんあるはずだ。

しかし、単価は安い。

だが、数をこなせば飯代と宿代は十分に払える。

化け物狩りの依頼を受ける前に、念の為本を確認する。

……大丈夫。あの時のような最悪の未来は書き記されていない。白紙のままだ。

あれから数日たち、この本についてわかったことがある。

まず、

1,遠い未来はわからないということ。この本は行動によって確定された絶対起きる未来しか表示されない。

2,それ以外の通常時は、先のページに白紙が表示される。

つまり、緊急事態の時、近い将来必ず起こる未来が表示され、それ以外の通常時は白紙が表示される。

3,破ったページの事実が無かったことにできる。

3についてはページを破棄したのが先日の一回だけなので確証はできないが、おそらくそういうことだろう。

そして、

4,ページは有限である。

4については当たり前のことだが、ページを破った分、この本の白紙のページが消費されている。つまりいくらでもページを破くということはできない。あくまで最低限に抑える必要がある。


この本の白紙ページが無くなった時、どうなるかはわからない。

だから白紙ページが多い分に越したことがないのだ。

ルーナとルドウィン、ティルシーとリリアリーの、2組に別れて、たくさんの化け物狩りの依頼を行った。

「ご苦労さん、はい、報酬ね。」
「ありがとうございます。」

化け物狩りをたくさん行い、結構な額お金が貯まった。

このお金は何に使うべきか……。

食事食事とうるさいティルシーの腹を満たすために、ご飯を済ませ、街をぶらついていたところ、男性が道ゆく人に声をかけるのを見かけた。

その男性の前を通ったルドウィンも、例外ではなく声をかけてきた。

「奴隷市場がやっています!興味はございませんか?奴隷は便利ですよ!」

この世界の発展度は現代の中世辺りだろう。ルドウィンがいた世界も中世ごろは奴隷はいた。

この世界にも奴隷があってもおかしくはない。

特に、発展途上の世界ではなおさらだ。

ルドウィンは現代人だから奴隷と聞くと抵抗がある。

しかし、便利なのも事実で、初めての地上人を仲間にできる貴重なチャンスだ。

しかも奴隷なので今までの悪い扱いを受けていただろう。丁寧に接すれば、恩を感じ、裏切らない可能性が高まる。

ということで、仲間を集めて相談した。

「みなさん相談です。」

「?」

「にゃ?」

「仲間を増やそうと思うのですが。」

「ほう。」

「にゃ!」

「え!」

「つまり、奴隷を買おうと思う。」

「ふ~ん。」

「にゃ。」

「そうなんですね。」

あれ、奴隷を買うと聞いても、意外と普通な反応。

現代人の感覚だと、奴隷を買うことは良いことだと思わないと思うが、ルドウィンがいた世界の中世では、奴隷は貴族、市民、奴隷の3つの階級の中の1つの階級として普通に受け入れられていたと本で読んだことがある。

現代の感覚では信じられないが、この世界でも同様な位置付けかもしれない。

「責任はルドウィン殿が取るのだろう。ならば、誰も反対すまい。なっ!」

「はい。」

「にゃ。」

あっさり承認されたため、ルドウィンたちは奴隷市場へ向かった。

ルドウィンは奴隷市場を見て、驚愕した。

奴隷には人権が存在しない。まるで、人間が商品のように扱われている。そんなこと、ルドウィンがいた現代では考えられないことだ。

そんなことが平然と許されている。

本で知っている知識でも、実際に見る光景だと、想像以上に拒絶反応がする。

しかし、次の瞬間。

「さて、今回は良い商品を手に入れていますよ!!」

ルドウィンはさっきまで奴隷を買うことに拒否反応を起こしていたのが嘘のように奴隷オークションに積極的に参加していた。

そう、これは運命の出会いだ。

黒髪、ぱっつん、小柄で、人形のようで、妖精のような、妖艶な奴隷の美少女。

その美しさにルドウィンは魅了された。

「こちらの少女!珍しい黒髪!黒い眼!妖艶で美しい見た目!肉体労働では役に立ちませんが、その希少性は高いと思いますよ!さあ、コレクターの皆さん!購入する方はいらっしゃいますか?」

「金貨1枚!」

「!!ちょ、ルドウィンさん!?そんな大金!」
「おっと!早速金貨1枚!他には?」

客がざわめき始めた。それもそのはず、奴隷一人を購入するのには破格の値段だ。

「金貨1枚、銀貨1枚!」
「おおっと!!金貨1枚と銀貨1枚!!他!他は?」

小太りの小金持ちそうなおじさんがオークションに参加してきた。

絶対負けないという強い意志で、ルドウィンはオークションに参加した。

「金貨1枚、銀貨2枚!」
「金貨1枚、銀貨3枚!」
「金貨1枚、銀貨4枚!」
「金貨2枚!」

どんどん釣り上がる値段。ヒートアップする会場。

そして、ルドウィンはどうしても彼女を仲間にしたかったため、火の国の国王から活動資金用でもらった金の延棒を売って得た資金と、今まで地上で稼いで得た資金すべて、つまり全財産を競りに託した。

「金貨3枚!!!!」
「金貨3枚!!」

カンカンカン!!!

この音と共に、奴隷の少女の購入が成立し、それと引き換えに、ルドウィンらの全財産は消えていった……。

ルドウィンたちは、奴隷市場から、競り落とした奴隷の子を、ほくほくの満面の笑みの奴隷商人から受け取り、その子と一緒に街をぶらついていた。

「あの!ルドウィンさん!」

怒っているルーナがルドウィンに話しかけてきた。

「はい、すみません。」
「いえ、別に仲間を購入したことを責めているわけではありません。ただ、限度があると思います。みんなで苦労して貯めたお金を、相談なしに全て使うなんて……!しかも活動資金まで全て使うなんて……!せっかくお金に余裕が出てきたのに!」
「……はい。」
「まあまあ、お金はまた貯めれば良いじゃないか。私が役に立つぞ。実は最近、手加減して相手を倒すコツがわかってきたところだからな。今は仲間が増えたことを素直に喜ぼう!私はリリアリー。君は?なんという名前だ?」
「……私の名前は……。ガイア。」
「…そうか。親しみを込めて、イアと呼んで良いか?」
「うん。」
「よろしく、イア。」
「うん!」
「あ、食べ物食べるか?お腹空いているだろう?」
「うん!!」

イアに街の露店で販売している果物を買い与えると、美味しそうにかぶりついた。

今はたくさんお金を使ってしまったため、こんなものしか買い与えないが、この後しっかり働いて稼ぎ、美味しいものを食べさせようと思う。

こうして、ルドウィンのパーティに新しい仲間、イアが新たに加わった。

……ルドウィンたちの全財産と引き換えに……。

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